冷却水(クーラント)の点検
冷却水(クーラント)の交換は、メーカー推奨時期は2年に1回です。
不凍液のクーラント Long Life Coolant(ロング・ライフ・クーラント)
クーラントの交換で防錆効果が向上します。
クーラントの主成分であるエチレンは冷却系内部を守る消泡剤が含まれています。
非常用発電機のエンジンを守ることにもつながります。
ヤンマー製LLCクーラント
冷却水抜き取り作業の様子
冷却水交換の様子
LLCクーラントの注入
クーラント(冷却水)交換の重要性
冷却水には、寒冷地でも凍ることのないようにするために、不凍液が含まれています。また、エンジンを始動した際に発する熱量(温度)を円滑にコントロールするための効果があります。冷却水が無ければ、エンジンはオーバーヒートを起こし、使用不可能になります。こういった事象を防ぐためにも適切な時期に適切な対応を行う意味でも冷却水(クーラント)の交換は2年に1回行うことが必要です。他にも、クーラント液には防錆剤が含まれています。
成分の割合
クーラント液の割合はエチレングリコール + リン酸塩素系物質 + 5%以下の水 = JIS規格となっていて、90%~95%程度のエチレングリコールと5%以下の水、4~6%の防錆剤が入り100%となります。金属腐食を抑えるためには、最低1%以上の防錆剤が必要となり、水を加えて30%にしたLLCの中に、1%以上防錆剤が入るように調合されています。
クーラントの劣化と寿命
LLC(ロングライフクーラント)は長時間使用を続けると、防錆性能及び不凍性能が低下していきます。
長期間、整備を怠ったままクーラント液の使用を続けると、クーラント液の流れや圧力・エンジン冷却による熱の影響により、防錆剤の被膜が剥がされ、金属表面が直接水と触れ合うと、エンジン内やラジエーター内を腐食させ錆などが冷却水の通路を詰まらせ、ラジエーターなどに穴が開き、冷却水漏れを起こす可能性もあります。また、整備不良などで、エンジンが高温になりやすい場合、クーラント全体に余計な熱が加わって遊離し、イオン化すると全体の濃度が薄まり劣化を早め不凍剤としての機能が果たせなくなります。目安は1年に1回の交換ですが、状況に応じて、整備や点検をすることが重要です。また、冷却水の入れすぎには要注意です。
クーラント液の色
冷却水の色には、漏れた時に一目でわかるように予め色が付けられいます。冷却水の色にはグリーンとピンクの2種類があります。色をつけている理由として、直ぐにわかりやすいためだけのものなので、色によって性能が変わるといったころはありません。着色料だけの違いだで、成分は同じですが、グリーンとピンクを混ぜてしまうと、黒に近い色になってしまうため、錆や腐食などの不具合が点検時にわかりにくくなってしまいます。そのため、冷却水を継ぎ足す場合は、今、使用している色と同じカラーの冷却水を使用します。
冷却水ヒーターも必ず交換
非常用発電設備の多くには冷却水ヒーターが付いていますが、これは冷却水の凍結を防止するためだけのものではなく、エンジンブロックを温めておいて、非常時の始動性能を助ける役目(エンジン始動補助装置)も兼ねています。冷却水ヒーターは消耗品ですので、2年毎に交換する必要があります。冷却水ヒーターの汚れや劣化を放置することで、絶縁不良となり非常事にエンジンを始動させることができなくなります。
ヤンマー不凍液(ロングライフクーラント)の混合比率 | |||||
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最低気温 | -15℃ | -20℃ | -24℃ | -29℃ | -42℃ |
混合割合 | 30% | 35% | 40% | 45% | 55% |
潤滑油(エンジンオイル)の点検と交換
潤滑油(エンジンオイル)の交換は、メーカー推奨時期は1年に1回です。
エンジンの働きを滑らかにします。
シリンダーとピストン軸受けなどの隙間に入り込んで油膜を作り摩擦を減らします。
ピストンリングとシリンダーの隙間を塞ぎ燃焼室からガス漏れを防ぎます。
エンジン内部の熱を冷やし、高温による焼き付きを防止します。
すすや燃えカス(カーボン)、金属粉などエンジンに悪影響のある不純物を取り込みます。
燃焼によってできた水分による錆や腐食からエンジンを守ります。
ヤンマー製潤滑油(エンジンオイル)
潤滑油抜き取り作業の様子
潤滑油(エンジンオイル)交換の重要性
潤滑油(エンジンオイル)には、エンジンの働きを滑らかにする役目があり、シリンダーやピストンといった摩擦の起こる機器の隙間に入り込み油膜を作ることで、負担を減らします。 また、エンジンから出る熱を冷やし、エンジンの焼き付きを防止したり、燃焼によってできた水分による錆や腐食から守ります。
潤滑油(エンジンオイル)は熱に弱い
潤滑油(エンジンオイル)は、ある一定以上の温度になると酸化及び劣化が急速に進みます。10℃以上上がると潤滑油(エンジンオイル)の寿命は半減します。また、潤滑油に要求される性能として、酸化安定性と清浄分散性の2つの性能が要求されます。
オイル漏れの原因
非常用発電機のトラブルとして、オイル漏れがあります。オイル漏れの原因として考えられることは、オイルパッキンが合っていなかったり、パッキンの裏返しなど、点検時の取付けミスによるものがあります。また、燃料を循環させるオイルシールが壊れている場合にもオイル漏れが発生する原因となります。
潤滑油(エンジンオイル)は気温にも影響される
潤滑油(エンジンオイル)は、外気温度変化の影響で使用できる潤滑油(エンジンオイル)も異なってきます。外気温度と適正潤滑油との関係を一定にしておくためには、潤滑油(エンジンオイル)にも夏用オイルと春・秋・冬用オイルに交換する必要がありますが、弊社で扱うオイルはオールシーズン用オイルを使用しています。
燃料の劣化
燃料などの潤滑油(エンジンオイル)や冷却水は定期的に交換しないと故障の原因になります。また、燃料交換の際に燃料が劣化している場合、酸っぱい臭いがします。このような場合、明らかに燃料が酸化し劣化している証拠です。このような劣化した燃料を交換せずに使い続けることは、エンジンへの影響やシリンダーの円滑な動作に影響します。また、劣化している燃料は錆の原因にもつながります。定期的に燃料交換する必要があります。
潤滑油(エンジンオイル)は運転時間に関係なく、空気中の酸素と化合し、自然劣化を引き起こします。また、運転で発生した燃焼成分と化合して劣化がさらに進行します。交換する場合は非常用発電機の機種によって異なりますので、一度、弊社までお気軽にお問い合わせください。
消耗品の交換時期と保守点検の周期
保守点検実施周期表
保守点検項目 | 保守点検実施周期 | ||||||
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2週間 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 6ヶ月 | 1年 | 5年又は300時間 | ||
エンジン | |||||||
外部点検 | ○ | ||||||
冷却水水量・漏れ点検・補給 | ○ | ||||||
燃料漏れ点検・補給 | ○ | ||||||
潤滑油量・漏れ点検・補給 | ○ | ||||||
油水分離器のドレン抜き | ○ | ||||||
燃料タンクのドレン抜き | ○ | ||||||
冷却ファン駆動用ベルトの点検調整 | ○ | ||||||
エンジン各部の増し締め | ○ | ||||||
冷却水(クーラント)の濃度点検 | ○ | ||||||
潤滑油(エンジンオイル)の交換 | ○ | ||||||
潤滑油(エンジンオイル)コシ器フィルタエレメントの交換 | ○ | ||||||
エアクリーナエレメントの交換 | ○ | ||||||
燃料コシ器エレメントの交換・タンクの洗浄 | ○ | ||||||
吸・排気弁隙間の調整 | ○ | ||||||
燃料噴射弁の調整 | ○ | ||||||
冷却水(クーラント)の交換 | (2年) | ||||||
ピストリング・オイリングの点検 | ○ | ||||||
吸・排気弁のすり合わせ | ○ | ||||||
冷却水ヒーターの点検 | (交換2年) | ||||||
機関冷却水回路のゴムホース増し締め | (初回) | ○ | |||||
バッテリ交換(蓄電池) | ○ | (5~7年) | |||||
発電機 | |||||||
発電機盤・自動盤の点検 | ○ | ||||||
ブラシ・スリップリングの点検 | ○ | ||||||
発電機各部の増し締め | ○ | ||||||
絶縁抵抗の測定 | ○ | ||||||
試験運転 | |||||||
始動試験 | ○ | ||||||
負荷試験 | ○ | ||||||
保守運転 | ○ |
注)バッテリ(蓄電池)、冷却水(ロングライフクーラント)、潤滑油(エンジンオイル)の交換寿命は環境や使用状況により、表記よりも短くなる場合があります。